新幹線で行く、思いがけない食文化との出会い
山形のだんご文化を代表する名店を訪れ、 大石田そば街道をめぐる

米処・山形県には古くからだんごを愛する文化があり、今なお各地にだんご店が残る。
その中でも山形新幹線大石田駅にある「最上川千本だんご」でだんごに舌鼓を打ち、さらに、山形三大そば街道の一つ、大石田そば街道をめぐって打ちたての香り豊かなそばを堪能しよう。
賞味期限は一日。出来たてをすぐに味わうだんご

山形県の北東に位置し、南北を最上川が貫く大石田町は、その地の利のよさもあり、古くから舟運の重要地点として栄えてきた。現在は名湯・銀山温泉への玄関口としても知られ、大石田駅には外国人客の姿も。
駅から外へ出て振り返れば、駅舎の上部全体が観覧席のようになっているのに気がついた。不思議に思い町の人に尋ねると、「ふだんは子どもたちの遊び場になっていますけど、毎年8月の最上川花火大会のときにはここが特等席になるんですよ」とのこと。そんな遊び心にもなんだか親近感が湧く。

米処として名高い山形県では、各地域で昔からだんごや餅に親しんできた。かつては最上川沿いにも、だんごを提供する茶屋のような店があり、家庭でも頻繁につくられていたという。そんな、だんご文化が根づく土地で圧倒的な人気を誇るのが「最上川千本だんご」だ。
もともとは豆腐店で、ご近所さんが家でだんごや餅をつくるために持ち込んだうるち米やもち米を、大豆を加熱した後の残りの蒸気で蒸す作業を代行していたのだそう。だんごづくりが上手だった店主のお母さんのつくり方をベースに店でもだんごを提供し始め、催事などを通じて瞬く間に人気が広がった。春〜秋の繁忙期には千本どころか一日5,000〜6,000本も売れるというだんごは、まるで赤ちゃんのほっぺたのような柔らかさ。たっぷりとたれがからんでいても、お米のおいしさがストレートに伝わってくる。翌日にはすぐ硬くなってしまうので、お店で出来たてをすぐに味わうのがお薦めだ。



東北の厳しい寒暖差が育んだ、香り高い地そばを味わう

この地で食べ逃してはいけない美味がもう一つ。打ちたてのそばだ。大石田一帯はそばの産地として名を馳せている。夏と冬、昼夜の寒暖差が激しい気候は、人間にとっては時に厳しいこともあるが、そばの栽培には適しているのだという。昔から家庭でも客人が訪れるとそばを打ち、飲んだ後などに振る舞っていた。そこから暖簾を掲げ店として営業を始めたところも多く、現在は“大石田そば街道”として駅周辺や山間部の次年子地域を中心に15軒のそば店が加盟し、個性と腕を競い合っている。
香り高い在来種の“来迎寺(らいこうじ)”や、次年子の地そばを使ったそばは香り高く、しなやかなコシが身上。訪れた「七兵衛そば」は、大根の搾り汁でつゆを割って食べるスタイルで、そばはなんと食べ放題。
田舎そばの素朴な風合いながら、どこか上品な味わいを感じさせる逸品だった。
北国ならではの実りが育んだ、だんごにそば。温泉でさっぱりと汗を流した後に味わうもよし。くれぐれもお腹を空かせて行くことを忘れずに。




七兵衛そば
- 住所
- 山形県北村山郡大石田町次年子266
- 電話番号
- 0237-35-4098
- 営業時間
- 11:00~15:00(売り切れ仕舞い)
- 定休日
- 木曜(冬季は金土日祝のみ営業)
- アクセス
- 山形新幹線大石田駅より車で約20分。
- 住所
- 山形県北村山郡大石田町次年子266
- 電話番号
- 0237-35-4098
- 営業時間
- 11:00~15:00(売り切れ仕舞い)
- 支店の東根店では食べ放題をやっていないのでご注意を。

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※本記事の情報は取材時の情報です
- 文:鹿野真砂美
- 撮影:山田 薫