食の本質を追求し 地域活性化を目指す
Restaurant Es レストラン エス

都内でイタリア料理やフランス料理の経験を積んだ新村彰人さんが次のステージに選んだのは、丸森町の古民家だった。「東京では最先端を見ることができます。でもその環境に長く身を置くほど、マクロの差を競うことよりも、地方の豊かな食材や自然豊かな環境に魅力を感じるようになったんです」
縁あって丸森の地に見つけた築300年の空き家を改修し、レストランを開業したのは2022年。「人里離れているけれど、白石蔵王駅まで車で15分。東京までのアクセスは悪くないし、家の前には小川が流れ、山もあるし畑もある。ぴったりの場所でした」
当初は食材集めに苦労もあったが、地の利、人の利を得て多くの生産者と関係性を築けた今は、土地のものをコンスタントに使えるようになった。その日に揃った食材を見てメニューを決める。それが店の方向性となった。
オープン当初から店の核を成す熟成肉も、大郷町や大崎市から届く経産牛を使うようになった。一頭買いして自ら解体し、併設の熟成庫で熟成させる。その技術や知識は東京の有名店で培ったもの。「ナッツ香を求められるけれど、それは副産物として捉えています。あくまで肉のポテンシャルを重視し整えてあげるという考え。A5ランクとは別の角度に変えて、歯切れや旨みを提案しています」。この肉を目当てに遠方から訪れる客は少なくない。
自らも畑を耕し野菜やハーブを育て、食後に出すハーブティーも手づくりする。「夏に摘んで乾燥させたローズマリーやマジョラムなどを漬け込みます」。買って出すのは簡単だが、香りを出せるものが近くにあるのに使わない手はない。「土地と自然を十分に感じてほしいですね」
いま注力しているのがノンアルのペアリング。「運転して来られた方にも楽しんでいただきたい」と試行錯誤を続けている。フルーツやハーブ、スパイスなどを組み合わせ、料理に合うのはもちろん、直感的に楽しむことに重きを置いて、漬け込み時間などを細かく調整。客の評価は上々で、ペアリングの7割がノンアルだそう。店舗の隣には、元スタッフの清野寛仁さんがクラフトジン蒸留所の開設も予定している。
さらに2025年初冬の開業を目指し、オーベルジュ併設の計画も進んでいる。「一棟貸しで6名程度利用可能な施設を考えています」。裏山では筍がすくすくと伸び、クロモジも自生。山椒も採れる。街灯のない夜空には満天の星がきらめき、早朝の空気は爽快だ。「泊まっていただくことで、丸森のまちや自然をより深く知ってもらいたい」と新村さんは期待する。
「周辺の耕作放棄地に牛を放牧したいんですよね」。草を食みながら荒れた土地を牛が耕し、そこに種を撒いて作物を育てたいという。「過疎地域を活性化させるために付加価値のある特産品を作り、丸森に関わってくれる人を増やしていけたらいいですね。作るだけじゃなくブラッシュアップも必要ですが、生産者が近いので相談もできる。この店を基盤に、チャンレンジしたいと思います」






レストランEs
- 住所
- 伊具郡丸森町大張大蔵下柳沢20
- 電話
- 0224-87ー8461
- 営業時間
- 12:00~15:00(13:00LO)、18:00~23:00(20:00LO)
※ランチ、ディナーともに完全予約制
- 定休日
- 月曜(祝日の場合は翌日)
- 駐車場
- 10台
- 席数
- 18席
- 予約
- 可 ※席のみ不可
- キャッシュレス決済
- 可
- 喫煙
- 全席禁煙
- メニュー
- Es corse(ランチ) 9570円
Es corse(ディナー) 1万1000円
Roar corse(ディナー) 1万5180円 グラスワイン 1200円~
- 住所
- 伊具郡丸森町大張大蔵下柳沢20
- 電話
- 0224-87ー8461
- 営業時間
- 12:00~15:00(13:00LO)、18:00~23:00(20:00LO)
※ランチ、ディナーともに完全予約制
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※本記事の情報は掲載時の情報です
- 取材・文:川野達子
- 写真:齋藤太一、池上勇人