自然、アート、歴史が融合する 200年の物語の新章が幕開け
複合施設 『風の沢』

築200年の朽ち果てかけた古民家を、買い取った杉浦節美さん自らが修復したうえ、周辺の里山を散策できるよう整備。その後ギャラリーとして開業した「風の沢ミュージアム」が、国登録有形文化財に指定された母屋・馬屋を活用したホテル、レストラン、里山フィールドを含む複合施設『風の沢』として今年2月、新たな歴史を歩み始めた。
宿泊は、1日1組限定。メインダイニングとフロント・ロビーを兼ねた母屋、馬屋を改装した寝室など、5棟の建物と広さ5千坪以上の敷地を貸切りにできる。どの建物も現代アートや民芸品、古美術品などを随所に配し、過去と現代が交錯するような元ミュージアムならではの空間。外に出れば、鳥のさえずりや風に揺れる草花の香り、季節ごとに移ろう里山の風景。春は新緑、夏は涼風、秋は紅葉、冬は雪景色と、訪れるたびに新しい表情を楽しめる。


食事は、シェフの高山仁志さんが手がける料理を母屋にて。夕食は〝東〞の〝人〞の食材、郷土料理を現代的な解釈で再構築する「Azuman cuisine」をテーマにしたオートキュイジーヌで、12〜15品ほどを提供する。
朝食は打って変わって、目の前の田んぼで穫れたひとめぼれや、敷地内で高山さんが収穫した行者ニンニクの醤油漬け、焼き胡麻豆腐など純和食。食材そのものの味わいを大切に引き出しつつ、料理によっては植物性の食材のみで仕立てたソースやダシを用いるなど、サスティナビリティも意識している。メインダイニングには、現代いけばな作家・松田隆作と、陶芸家・吉川正道の作品を展示。古民家の空間に溶け込むようなアートが、食事を芸術的な時間として演出してくれる。ほかにも茶室や瞑想室を備え、滞在中は自由に利用可能。宿泊すれば、歴史と自然、アートが融合した空間で、芸術のような美しい暮らしを体感できる。
宿泊時間以外は、これまでと変わらずミュージアムとしての機能を維持。さらにセレクトショップのオープンやカフェレストランのリスタートなど、今後の展開もめじろ押しだ。新しい『風の沢』で、日常から少し離れる特別な時間を過ごしてほしい。



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- 取材・文:小林薫(編集部)
- 写真:齋藤太一