生産者と料理人を結ぶもの。その信頼が生む唯一の味わい
Pig6 ピグロ

気仙沼に揚がった鰹は、もっちりとした身質の夏鰹。脂の若い背側を塩〆にしてさらにもっちりと旨み濃く、蒸した長茄子と重ねスダチを搾る。茄子のじゅんわりとした甘さを挟んで、スダチ、オリーブオイルの柑橘系の爽やかさと鰹の風味が出合う。チカチカと瞬くフルール・ド・セルの塩味。ひとつひとつはありふれた素材であり調理なのに、今までに味わったことのない組み合わせだ。「予定調和にはしない」。そう言った瀧澤さんのポリシーが、前菜のひと皿から十全に伝わる。
「無精者」「怠け者」。そんな意味の店名を有していながら、瀧澤さんはおそろしく勤勉だ。天然酵母を育てパンを焼き、パスタを打ち、チーズを作り、発酵調味料やスパイスオイルまで自家製する。卵黄が多めの比率で手打ちしたタリオリーニは、幅にムラを出して食感にアクセントをつけるため手切りに。このパスタに合わせる一角は、仙台朝市に店を構える「金華山」のホヤ。


「仙台朝市には、宝探しのような楽しみがあります。店先に並ぶ野菜や魚の価格や量で旬の状況やとれ高が実感できるし、思いがけず良質な素材がとても安く手に入ったり。中でも『金華山』に並ぶ魚介類は、鮮度も質もとてもいい。そして、すごく正直。高い理由も安い理由もまっすぐに教えてくれるから、とても信頼しています」
そしてもう一角には、色麻「ともちゃんの野菜畑」のモロッコインゲン。
「うちに野菜を卸してくれているのは、「渡三商店」。店主である渡辺正信さんが吟味した生産者さんから直接仕入れを行っています。何が届くかは、その日の渡辺さん次第。ウコギやむかごが届いた時には、何を作ろうかしばし考えましたね」
正直でチャレンジングな仕入先が瀧澤さんのインスピレーションを刺激し、独創的な味わいの元となる。
「自分だけの味を」。そのアイデンティティへの探求は、シンプルなポークカツレツにも発露。登米の大泉ポークの肩ロースに自家製天然酵母のライ麦パンで作ったパン粉をまぶし、フライパンでじっくりと揚げ焼きに。オーブンは使わず、手作業での六面焼きや火加減で最上の焼きあがりを実現する。衣の香ばしさ、肉の中心にあふれるジューシーな肉汁。「ピグロ デッレ ソルベ」の古漬のような熟味とドライさが、かつてない相性を見せるだろう。

コースは約7、8品の「おまかせコース」(5500円)のみ。パスタとメインはプリフィクス。


Pig6
- 住所
- 仙台市青葉区立町17-14 コーポ沼倉1F
- 電話
- 022-797-5319
- 営業時間
- 17:00~24:00
- 定休日
- 不定休 ※8月18日~20日は休み
- 席数
- 10席
- 予約
- 可 ※できれば事前に予約を
- 料金
- 8000~1万円
- カード
- 可
- 喫煙
- 全席禁煙
- メニュー
- グラスワイン 800円~
- 住所
- 仙台市青葉区立町17-14 コーポ沼倉1F
- 電話
- 022-797-5319
- 営業時間
- 17:00~24:00
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※本記事の情報は掲載時の情報です
- 取材・文:ナルトプロダクツ
- 写真:呉島大介