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宮城生まれの赤酢が宮城づくしのすしを完成させる

奥野醸造 奥野大地さん × 寿し扇 室井政樹さん

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記事制作:
Kappo
奥野醸造 奥野大地さん × 寿し扇 室井政樹さん

『奥野醸造』が手掛ける赤酢。その完成を誰よりも待ちわびていたのは、大崎市の駿才『寿し扇』の室井政樹さんだ。

「宮城でなければ味わえないすしを握るなら、米と酢は要の存在。宮城県内に本格醸造の酢があると知り、『奥野醸造』さんを訪ねて感銘を受け、使い始めました。一流どころの赤酢も試しましたが、『奥野醸造』の「結び酢」と「米酢」のブレンドの方が本当に好みだったんです」

日本古来からの伝統製法「静置発酵」で醸造を手掛ける『奥野醸造』の奥野大地さんが室井さんの言を受け取る。

「わたしが修業した熊野の蔵はもともと赤酢専門の蔵でしたから、赤酢の醸造は蔵を立ち上げた時からの目標のひとつ。酒粕の熟成を待って仕込みに入りましたが、工程などもほかの酢とは全く異なり、なかなかに手間のかかるものでした。そうしてできた初めての赤酢を、ようやく届けることができました」多忙を極める奥野さんに催促を重ねてしまったことに、改めてお詫びを申し上げたい。

かくして『寿し扇』へと届けられた赤酢を使い、室井さんは3種のすし飯を切った。赤酢5:結び酢1、赤酢5:純米酢1、赤酢0.5:純米酢9:結び酢4の3種だ。

「奥野さんの赤酢は、赤酢独特のまろみはありつつ、酸もまだまだフレッシュで立ち上がりがきれいです。この赤酢をベースに、同じ酒粕で仕込んだ「結び酢」、米仕込みの「純米酢」で支えたもの2種類と、逆に「純米酢」と「結び酢」で切ったこれまでの私のすし飯に赤酢のアクセントを加えたものと、計3種類で何種類かの種を食べ比べしてもらおう、という趣向です」

同じ種を3種のすし飯で握り分けた三連星は、塩竈のコチの昆布〆、石巻の赤いか、青森の本マグロ。

宮城県唯一の酢の本格醸造所、『奥野醸造』の醸造主・奥野大地さん(左)と大崎市の名店『寿し扇』の若親方、室井政樹さんは、もう何年も前から交流をあたためていた。

「赤酢5:純米酢1のすし飯はコチのさっぱりとした風味を、そして赤いかの甘みをひきたてていると思います。逆に本マグロの赤身には、赤酢5:結び酢1のすし飯が後口がきれいですね」

奥野さんの感想に、一同も大きく頷く。続く大トロは、赤酢5:結び酢1のすし飯で決め打ち。大トロの脂と混然となることですし飯の甘酸っぱさが華やかに立ち、余韻も長い。そうして煮蛤、車海老、小肌、と味わううち、個人の好みを脇へ置いたとしても「ひとつに決めがたい」という感想が出てきた。要は、種とすし飯の一体感を感じさせる塩梅も、コントラストを感じさせる塩梅も、どちらも魅力的なのだ。赤酢の確かな存在感がすし飯に複雑に作用し、種と合わせた時に異なるふくらみを持たせている。

「今までよりもさらにすし飯に焦点を合わせて種への仕事を施すのか、日々の種に合わせてすし飯の調合を変えるのか、常に数種のすし飯を用意しておくのか…。できることはまだまだありそうです」

室井さんにとってすし飯はすしの要であるだけに、これからの研究にさらに熱が入りそうだ。

瓶詰したての『奥野醸造』の赤酢。米沢市の「おたまや」の酒粕を5年熟成させて仕込んでいる。
『奥野醸造』の赤酢を軸に「純米酢」「結び酢」の3種の配合を変えて切ったすし飯。
干瓢巻。この〆のひと皿がいちばん悩ましかった。甘さと酸味の出方が驚くほどに異なる。
大トロ。赤酢5:結び酢1のすし飯と共にとろけて華やいだ余韻を残す。
繊維を壊した赤いかのねっとりとした甘みを赤酢5:純米酢1のすし飯が増幅。

寿し扇

住所
大崎市古川東町5-47
電話
0229-23-0411 
営業時間
12:00~14:30、17:30~22:00
※室井政樹さんのコースは昼のみ、完全予約制
定休日
日曜、ほか不定休あり
席数
40席(昼のコースは8席)
予約
席のみは可
目安
昼5000~8000円、夜5000~8000円
カード
不可 
喫煙
分煙
メニュー
おまかせコース(昼)5500円、7700円、1万1000円
住所
大崎市古川東町5-47
電話
0229-23-0411 
営業時間
12:00~14:30、17:30~22:00
※室井政樹さんのコースは昼のみ、完全予約制
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奥野醸造

住所
柴田郡柴田町入間田字林44
営業時間
10:00~17:30(問い合わせは平日のみ)
電話
0224-51-8891
住所
柴田郡柴田町入間田字林44
営業時間
10:00~17:30(問い合わせは平日のみ)
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※本記事の情報は掲載時の情報です

  • 取材・文:ナルトプロダクツ
  • 写真:池上勇人