地域の気質をワインに込めて 手紙のように届けたい
ベルウッド ヴィンヤード

田んぼと畑しかない開けた場所にベルウッドヴィンヤードのモダンな建物はある。「のどかだし、この開けた空気感がいいですよね」。代表の鈴木智晃さんの言葉に共感する。
上山市久保手地区に耕作放棄地と担い手のいないデラウェア畑を借り受け、新規就農者としてブドウ栽培を開始したのは2017年。3年間は主に自社栽培の有核デラウェアで委託醸造を行い、ワイナリーが完成した2020年からは、自社栽培ブドウと買いブドウも使いながら毎年約2万本のワインを家族で醸造している。
「上山を選んだのは、欧州系ブドウのポテンシャルがあるエリアだと熟知していたし、先駆者的なワイナリーもある。買いブドウも視野に入れていたので、知識や技術が豊富な農家さんの存在も決め手になりました」。原料供給の付き合いにとどまらず、どのようなブドウを栽培すればおいしいワインになるのかを考えてくれる意識の高い生産者が多いと話す。
メインヴィンヤードはワイナリー裏手の小高い丘にある。北斜面には熟度と酸を重視するピノ・ノワール、ピノ・グリ、ソーヴィニヨン・ブランを、南斜面には熟度を高めたいメルロとカベルネ・ソーヴィニヨンを植えている。また新たに20aほどの畑を借り受けた。「今年、アルバリーニョとプチ・マンサンを植える予定です。これでようやく1haです(笑)」
買いブドウもこれから増やしていく方針。「久保手と周辺エリアは良質なデラウェアの産地として地域に根付いています。根付くということは適地だということ。欧州系ブドウをやりたくて上山に来ましたが、糖と酸のバランスがとれた久保手気質のデラウェアは大切な品種です」。地元のブドウを使い、栽培をあきらめる農家を少しでも減らしたいとの想いも強い。
ラベルデザインにもこだわっている。「毎年味が変わるワインを、お便りのように届けたいという想いを込めました」



ドメーヌ クロッシュ デラウェア オランジュ2020
750ml / 3740円
自社栽培ブドウで造るフラッグシップシリーズ。デラウェアを醸し発酵。皮と種からも旨みと渋みを引き出し、10カ月間樽熟成。瓶詰後24カ月熟成。柔らかな酸味とまろやかな渋みが芳醇な辛口オレンジワイン。抜栓後も長く味わいを楽しめる。
キュベ デ ザミ カベルネ・ソーヴィニヨン2020
750ml / 3960円
熟すのを待って11月に収穫した上山産カベルネ・ソーヴィニヨンをコールドマセレーション。豊かな果実味となめらかなタンニンが感じられる。
キュベ デ ザミ シャルドネ2020
750ml / 3960円
上山産シャルドネを使用。はじめはドライな印象だが、次第に果実の甘みも感じられる。力強い酸味とコクは肉料理にも合う。

「コレクション ヴァン ペティアン」シリーズから デラウェア ブラン2022、デラウェア オランジュ2022
各750ml/2200円
ブドウの味わいをストレートに感じられる微発泡ワインで、どちらも久保手地区と隣接する山形市本沢地区産のデラウェアを使用。リンゴやラ・フランスのような華やかな香りとすっきりした酸が調和した辛口ブランと、醸し発酵のほのかな渋みが心地よい辛口オレンジは、2023ヴィンテージの発売に合わせて再登場。
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- 取材・文:川野達子
- 写真:池上勇人