“山の料理”に充実感をもたらす 多種多様な肉料理
ristorante giueme レストランテ ジュエーメ

「ようやく肉が揃ってきました。特に豚!」と、オーナーシェフの佐々木章吾さんはうれしそうに話し始める。
秋田の魅力をイタリア料理で伝えたい。その舞台とすべく、地元の大仙市に『ristorante giueme』を2014年に開業した。当初は店をやりながら食材探しにも奔走。最初にたどり着いた肉は『かづの牛』だった。「放牧で育った日本短角種。引き締まった赤身は味が濃くて旨みも格別でした」。そのランプ肉を炭火で焼くと、薫香をまとった赤身は噛めば噛むほど旨みが増す。「トリッパやレバーなど内臓もおいしい。理由があるはずだと生産者に聞いたのですが、彼らもわからないそうです(笑)」
「ちょっと弱かった印象」という豚肉にも、ようやく好みが現れた。「横手市の十豚(じゅっとん)は上質な脂身と、濃厚でも後味さっぱりの赤身のバランスがいい。ヨーロッパの豚のような強い風味もあります」。塩との相性がよく、塩釜焼きで間接的に火を入れる。「その間に塩がゆっくり浸透し、肉の旨みをよい加減で引き出してくれます」
佐々木さんは高校まで地元で過ごし、「秋田から離れたい一心で」仙台の大学へ進学。目的を成したその後は喫茶店や飲食店でアルバイトの日々。気づけば30歳も過ぎた頃、故郷への貢献という想いを抱くようになっていた。「自分にできるのは飲食業しかありません。仕事をしているうちに出会ったイタリア料理を、きっちり修業することにしました」。3年後に店を出す前提で上京。世田谷にある『フィオッキ』の門を叩き、堀川亮シェフの薫陶を受けた。「イタリアの地方料理を解説した愛読書に見つけた店でした。山の食材を多用するピエモンテ州の料理は素朴ながらおいしく、これなら秋田の人にも受け入れられると思いました」
堀川シェフのスペシャリテ『仔羊の藁包みロースト』を作ることもあり、2年前からは大仙産の羊で作れるようになったと胸を張る。仕入れるのは「まさにミルキー」と評する生後16カ月のホゲット。骨付きロースを稲藁と干したハーブで包み低温でゆっくり火を通す。肉はしっとり焼き上がり、噛めば旨みがあふれ出す。
店にはまだスペシャリテと呼ぶメニューはない。「山や森、淡水や沼地など周辺の環境をそのまま表現したい。だから調理スタッフと話し、味を確認しながら、時々で臨機応変に変えていく感じなので」と佐々木さん。
そんな彼が「5年後にはスペシャリテと呼んでいるかも」と言うのが、地元のジュンサイ沼で自ら収穫し、その様子を表現した『ジュンサイの皿』。そして、比内地鶏の手羽の中にアワビを詰め、赤ワインで煮込んだ料理。『フィオッキ』では豚足に煮アワビを詰めカツレツに仕立てる、その応用。「下に引いてあるのは沼山大根のピュレです」。沼山大根は秋田の在来野菜で、オープン当初からの付き合いという地元生産者が復活させた、秋田ならではの食材。「ここじゃないと作れない料理ですから」。他にもスペシャリテが増えそうな予感。今後の進化が楽しみである。


- 住所
- 秋田県大仙市戸蒔字谷地添100-1
- 電話
- 0187-73-5053
- 営業時間
- 11:50~15:00
(料理は12:00から一斉スタート)
18:20~22:00
(料理は18:30から一斉スタート)
- 定休日
- 水・木曜
- 駐車場
- 10台
- 席数
- 20席
- 予約
- 前日まで要予約
- 目安
- 昼5000円~、夜1万円~
- カード
- 可
- 喫煙
- 全席禁煙
- メニュー
- ランチ
Aコース(6皿) 4598円
Bコース(7皿) 7260円
ディナー
Aコース(9皿) 9075円
Bコース(11皿) 1万2705円
- 住所
- 秋田県大仙市戸蒔字谷地添100-1
- 電話
- 0187-73-5053
- 営業時間
- 11:50~15:00
(料理は12:00から一斉スタート)
18:20~22:00
(料理は18:30から一斉スタート)
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※本記事の情報は掲載時の情報です
- 取材・文 :川野達子
- 写真:池上勇人