夢などという甘いものではない。 必ず到達する目標を見ている。
Restaurant Pas Mal レストラン パ・マル

村山優輔さんの主張はずっと一貫している。それは、端的にいうなら「山形ガストロノミーの確立」だ。天童市を代表する人気店だったビストロ『パ・マル』を閉め、本格フランス料理店『パ・マル』として七日町でリ・スタートを切ったのが2017年。あれから7年が経ち、村山さんの背を追うように新進かつ胆力のあるフランス料理店も増えてきた。「フランス料理店がなければ、そこに必要な食材の生産者も育たない」という彼の主張を裏付けるように、西洋野菜やジビエの生産者も息を吹き返してきた。村山さんはさらにつき詰める。
「山形はブランド食材の宝庫だといわれているけれど、日常的に山形のブランド食材を口にしている人がどれだけいるか。高値の付くものは都会へ流れ、物価の安い地元の飲食店には手が出ない。山形の人が、山形の飲食店で、山形の食材の魅力に出合えない。そんな状況をまずは打破したいんです。そして山形のレストランと食材の価値を底上げし、山形の食を目的にした来訪客を増やすことが現在の目標です」
ツキノワグマのロースに堀込セリとゴボウ、長ネギを合わせ、イノシシのコンソメで芋煮仕立てにしたひと皿は、臭みやクセがまるでない。上質な赤身牛と黒豚を掛け合わせたような、それよりさらに芳しいような。クマとイノシシの地力の強さと、それをくっきりと浮き彫りにする料理の力に圧倒されるばかりだ。東根で獲れたキジは、ムース状にしてモリーユ茸に詰め、鶏の白湯とトリュフのソースで。キジとモリーユ茸、どちらもそれぞれに濃い旨みと香りを有し、合わさると足し算ではなく掛け算になる。ソースはふたつの主役に寄り添い残像のような深みを与える黒子の存在だ。
この日のヴィアンドはイノシシ。ロースとバラの2種のローストで、ぎゅうぎゅうと噛みしめるほどにうまいロースと、さっくりと噛んだ脂から甘さがにじみ出るバラの二つの魅力を両得する。畑一枚まるごと買い上げている河北町のホワイトアスパラガスも、実に瑞々しい。ウォーホルのマリリン・リップを彷彿させるデセールは、その名も「Kiss」。味わえば、山形産フランボワーズの甘酸っぱさがさらに刺激的でエロティックだ。
未だ知られざる良質な素材を掘り起こし、フランス料理の手法で新たな価値を付加し、山形を訪れなければ決して味わえないスペシャリテへと高める。その価値を正しく知るゲストがふさわしい対価を払うことで、レストランの価値を高め、ひいては食材の価値を高める。村山さんが『パ・マル』で実践していることが山形全体に広がれば、それが山形ガストロノミーの中核になるだろう。

- 住所
- 山形県山形市七日町2-3-16
- 電話
- 023-687-1099
※3日前までの完全予約制
- 営業時間
- 11:30~14:30
(13:00最終入店)
18:00~22:30
(20:00最終入店)
- 定休日
- 水曜、第2火曜
- 駐車場
- なし
- 席数
- 10席
- 席予約のみ
- 不可
※ランチは2日前まで、
ディナーは3日前までの完全予約制
- 目安
- 昼1万2000円、夜2万円
- カード
- 可
- 喫煙
- 全席禁煙
- メニュー
- ランチ 8800円~
ディナー 1万3200円
ディナー 1万6500円
ペアリング 7700円(5種)、8800円(6種)
※税込み、サービス料5%別
- 住所
- 山形県山形市七日町2-3-16
- 電話
- 023-687-1099
※3日前までの完全予約制
- 営業時間
- 11:30~14:30
(13:00最終入店)
18:00~22:30
(20:00最終入店)
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※本記事の情報は掲載時の情報です
- 取材・文:ナルトプロダクツ
- 写真:池上勇人