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二戸

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石高、品質ともに 岩手を代表する日本酒蔵

南部美人(酒蔵)

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記事制作:
Kappo
南部美人(酒蔵)

創業120年を超える県北の名蔵

岩手県の日本酒を語る上で外せないのが、「南部杜氏」の存在である。蔵の酒造責任者である杜氏は、冬の仕込み時期になるとその下で働く蔵人たちとともに、農村から酒蔵にやってきた。そういった各地の杜氏の中でも、岩手の石鳥谷を中心とした「南部杜氏」は日本三大杜氏集団のひとつとして江戸時代からの歴史があり、東日本を中心とした全国の酒蔵で高度な技術を駆使してきたのである。 

南部杜氏の造る日本酒の特徴は、雑味のない「きれいな」酒質にあるとされている。そして口当たりが柔らかで、豊潤なうまみを造り出す。寒い土地ということもあり、低温での長期発酵の技に長けているのである。 

二戸市にある『南部美人』は、明治35年創業の老舗であり、岩手で最も知られている酒蔵といってよいだろう。石高も岩手最大で、かつ高品質の酒造りに徹しており、普通酒より品質が上の「特定名称酒」が実に全体の8~9割を占めている。

日本酒業界は一時の低迷から復活を遂げ、今では海外も含めて日本酒が活況を呈しているが、それはひとえに高品質の酒造りに転換したからであり、現在勢いのある酒蔵は新しい技術を取り入れながら、よりうまい酒造りへの挑戦を続けている。 

 

高品質を追求した技術の数々

『南部美人』の銘柄は昭和26年に生まれた。そこには「きれいで美しい酒を造る」という思いが込められていたという。戦後の日本酒は低品質での大量生産が主流であったのだから、かなり特異な存在といえる。 

現在の蔵元である五代目の久慈浩介氏はきれいな酒であるとともに「フレッシュなおいしさ」を重点にして、様々な技術改革を行ってきた。 

蔵で仕込んだもろみは「ヤブタ」という機械で搾ったのち、「中空糸」を使った「精密ろ過器」でろ過する。これにより微小な酵母や雑菌だけでなく、でんぷんやたんぱく質の粒も取り除けるので、よりクリアな味にすることができるのだ。 

さらにできるだけ早く瓶詰めし、火入れして殺菌と酵素の失活を行う。ここには「パストライザークーラー」という最新の技術を取り入れている。 

一般的には搾った後に火入れしてタンク保管し、出荷時の瓶詰め前に再度火入れするという手順なのだが、『南部美人』では最新の装置を導入して、即瓶詰めして火入れ1回のみを基本にした。その結果、よりフレッシュさを残した味わいで出荷することが可能になったのである。 

さらに保管でも改革を行った。特に上質な日本酒は繊細であり、常温保管ではどうしても味が変化してしまう。そこで南部美人では新しく大型冷蔵倉庫を造り、実に「マイナス5℃」での保管体制を整えた。これは日本酒が凍らないぎりぎりの温度であり、フレッシュな酒質を長持ちさせることができるのだ。 

仕込みタンクのもろみを攪拌する「櫂入れ」の作業。盛んに発酵しているので、ふつふつと泡が出ている。
新しく造った「馬仙峡蔵」。ここには最新のマイナス5℃保冷庫も完備している。
南部美人の技術の粋を集めた3本(右から)
スーパーフローズン純米大吟醸生原酒
マイナス30℃で急速冷凍して搾りたての味を閉じ込めた世界初の酒。

あわさけスパークリング
シャンパンと同じ瓶内二次発酵による、あわさけの最高峰(SAKECOMPETITIONスパークリング部門2017、2018と2年連続1位獲得)。

糖類無添加梅酒
全麹純米酒と梅のみの特許技術で仕込んだ大人の梅酒。(ミラノ梅チャレンジ2023金業受賞)。
南部美人の主軸5本 (左から)
特別純米(赤)
二戸産の「ぎんおとめ」が主原料。やさしい果実香と上品な米のうまみ(IWC2017 SAKE部門最高賞チャンピオンサケ受賞)。

吟醸(青)
精米歩合60%。低温発酵による上品な香りときれいな後味(IWC2021SAKE部門吟 醸の部シルバー受賞)。

純米吟醸(緑)
特別純米とツートップをなす商品。心地よい吟醸香、キレのある上品な純米吟醸(Kura Master 2021 プラチナ賞受賞)。

大吟醸(白)
精米歩合40%。華やかな香りとしっとりとして淡麗なうまみの大吟醸。

純米大吟醸(黒)
山田錦35%精米。JALファーストクラスの機内酒に採用された実績を持つ南部美人の最高峰(SAKECOMPETITION2018純米大吟醸部門1位獲得)。

搾りたての生酒を瞬間冷凍

久慈社長は、蔵で飲む「搾りたての生酒」がいちばんおいしいと考えている。そしてその味を全国の消費者に届けたいとの強い思いがあった。 

火入れをしない生酒(本生酒)は発酵が止まっておらず、賞味期間は短い。さらに低温貯蔵の状態でも劣化しやすい。 

その難題を解決させたのが「急速冷凍貯蔵」との出合いだった。これは液体急速冷凍技術を使ってごく短時間でムラなく凍らせるというもので、刺身や肉を解凍してもドリップが出ず、おいしく食べることができる。 

これを日本酒に応用できないかと考え、試験品を岩手県工業技術センターに持ち込んで検査してもらった。その結果、味や香りの劣化はほとんどないとの結論になったのである。 

それを受けて『南部美人』では早速設備を導入し、マイナス30℃で急速冷凍させた「スーパーフローズン純米大吟醸生原酒」を商品化させたのである。これは世界で初めての試みだった。 

62の国と地域に輸出

『南部美人』は高品質の日本酒を醸造する蔵であり、品評会やコンクールでの受賞は数えきれない。その中でも特筆されるのが2017年に「IWC」(インターナショナルワインチャレンジ)SAKE部門で、「南部美人・特別純米」が「チャンピオンサケ」に選定されたことだ。世界最大級のコンテストで出品数1245銘柄の最高峰となり、『南部美人』の名は一躍世界にとどろいたのである。 

『南部美人』は従来から海外輸出を積極的に進めていた。全国でもいち早く本格的な販路拡大に取り組み始め、現在では世界62の国と地域に対し、生産量の3割ほどを輸出するまでになっている。

岩手の日本酒はその土地に根ざした食の特産品として、地理的表示(GI)「岩手」の指定を受けている。中でも「オールいわて清酒」と表示しているものは、米、水、麹菌、酵母の全てを岩手産のもので醸造している。 

岩手の風土に寄り添った日本酒造り

近年は酒どころの各地とも県オリジナルの酒米、日本酒酵母、種麹の開発が著しい。岩手県では酒米の「結の香」「吟ぎんが」「ぎんおとめ」や、酵母の「ゆうこの想い」「ジョバンニの調べ」といったものを世に出している。『南部美人』でもこれらを積極的に使い、岩手県北の風土や個性に寄り添った酒造りを行っている。これはワインなどでいう「テロワール」の思想である。日本酒は食事とともに楽しむ酒であり、その土地に根ざした料理や食材との「ペアリング」を考えた場合、とても重要なファクターとなるのである。 

水は折爪岳からの伏流水。ミネラルを含む「中硬水」が、しっかりした味を造り出す。
マイナス5℃の保冷庫内。タンクではなくあえて瓶で貯蔵するため、広いスペースを確保。
「ヤブタ」はもろみを搾る機械。品質徹底のためこの機械も保冷庫の中に設置している。

南部美人

住所
二戸市福岡字上町13
電話
0195-23-3133
住所
二戸市福岡字上町13
電話
0195-23-3133

本蔵hongura

電話
0195-23-3133
営業時間
9:00~16:00
定休日
年末年始
電話
0195-23-3133
営業時間
9:00~16:00
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酒蔵見学

場所
南部美人本社蔵
電話
0195-23-3133(蔵元直営店運営課)
所要時間
約1時間(見学、試飲、買い物)
料金
コースにより1650~5500円
定員
1~30人
場所
南部美人本社蔵
電話
0195-23-3133(蔵元直営店運営課)
所要時間
約1時間(見学、試飲、買い物)
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  • 年末年始を除いて毎日受付 (原則として要予約)
  • 造りの期間(10月~5月)は午後のみ
  • 受付時間は9:00~15:00

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