日本酒とウイスキー。伝統を守り、次代を拓く郡山の老舗酒蔵
安積蒸溜所・笹の川酒造

安積蒸溜所
ウイスキー造りの始まりは戦後まもなくに遡り、「チェリーウイスキー」が人気を博す。ベンチャーウイスキー社の肥土伊知郎氏との縁もあって2016年、笹の川酒造内に新たに安積蒸溜所を設け、ウイスキー製造を再開した。
風土が酒を醸す「風の蔵」
郡山市がある安積平野は明治時代、猪苗代湖から水を引く『安積疏水』によって大きく発展を遂げた。日本遺産にも登録されているこの安積開拓に貢献した開成社25人の商人の一人に、笹の川酒造の5代目当主山口宗春(初代山口哲蔵)が名を連ねる。この「開拓者精神」は、今も笹の川酒造 に受け継がれている。
笹の川酒造の創業は明和2(1765)年。東北の酒蔵としては比較的穏やかな自然環境に置かれているが、磐梯山から猪苗代湖を渡って強い西風が吹く。この渇いた寒風もまた、風土にこだわる酒造りを行う「風の酒蔵」笹の川の酒造りにとって欠かせないものだという。260年を数える酒造りの歴史の中で、蔵は安積平野に根差し、地元の人と向き合い、酒の旨さを追い求め続けている。

安積蒸溜所で最初に仕込まれた記念すべきシングルモルトウイスキー。バーボンバレルファーストフィルをキーモルトとした優しく芳醇、深みのある味わいに仕上がっている。非冷却濾過、無着色。

創業250年を機に安積蒸溜所開設
そんな笹の川酒造だが、実はウイスキー造りでも国内で有数の歴史を持つ。第二次世界大戦の翌年にはウイスキー免許を取得。一升瓶で販売された「チェリーウイスキー」は、1980年代の地ウイスキーブームには全国でファンを魅了した。
ブームの衰退とともにほとんどの地ウイスキーメーカーが姿を消し、チェリーウイスキーも蔵の奥で眠ることとなったが、2000年代に入り、笹の川酒造のウイスキーは転機を迎える。現在世界的に人気を博す「イチローズモルトウイスキー」(ベンチャーウイスキー秩父蒸溜所)を生み出した旧東亜酒造羽生蒸溜所の売却に当たり、貯蔵されていた原酒を笹の川酒造が受け入れることとなったのだ。その時の大量の原酒をリリースし、ベンチャーウイスキー社は立ち上げられたという。同社の肥土伊知郎氏の誘いを受け、また、自らもウイスキーについて学ぶ中でその魅力に気づき、2016年、敷地内に「安積蒸溜所」を創設。新たに設備も整え、ウイスキー造りを始めた。
安積蒸溜所のウイスキーは現在、シングルモルトの「安積」や自社の原酒と輸入原酒をブレンドした「山桜」、さらに自社の原酒をキーモルトに世界5大産地のウイスキーをブレンドした「安積蒸溜所&4」など様々なブランドと特徴を有し、世界的な品評会で高い評価を受けている。
2021年、笹の川酒造では「福島県内で一番辛口の日本酒」と銘打ち、日本酒の辛口の指標となる日本酒度が+20以上(平均的辛口の酒は+10前後)の大辛口の日本酒「福島一辛口 いち」を世に出した。振り返れば酒造りをはじめて今日に至るまで、激動する世の中で蔵はその伝統を守りつつ、次世代に繋ぐ柔軟さも併せ持つ酒造りを行ってきている。さながらしなやかに風に吹かれる笹の葉のように。
笹の川酒造
1765年創業。安積平野という土地にこだわり、その気候風土、県産の米を活かした酒造りを目指す。また、昔ながらの製法も大事にしながら、新たな挑戦も続け、酒の魅力づくりも心掛ける。

米の糖分を極限まで純粋に発酵させて生まれた旨みのある大辛口。アルコール分19度。月の満ち欠けを表現したラベルもスタイリッシュ。ぜひロックで。

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- 取材・文:畠山久美
- 写真:池上勇人













