万人受けする田舎そばでそば処・山形を全国へ
甑

山形県のそば街道発祥の地とされる村山市に店をオープンしたのは2021年。「甑」という店名は、店の裏手に見える雄大な甑岳を由来としている。
この辺りは古くからそばの栽培が盛んな地域で、人が集まると、そば殻のまま挽いた粉で、田舎そばと呼ばれる黒くて太いそばを打ち、板にのせて振る舞っていた。それが現在の板そばの原型と言われ、市内には板そばを出す店が点在している。
この店のメニューもメインは板そば。店主・槙 弘法さんが打つのは中太の外二。「いわゆる田舎そばですが、食べやすさを意識しています」。ホシ(殻)が多いと風味は強いが、多すぎれば食感や舌触りが悪くなり食べにくくなる。「風味は残しつつ、食べやすくて万人受けする田舎そばを提供し、そば処としての知名度を高めたいと思っています」
自分たちが抱いている全国有数のそば処という意識は、全国的な認識ではないという。「山形といえばサクランボ。それと肩を並べる存在になりたいですよね。山形の夏新そばも、もっと広く浸透すると思います」。秋の新そばが出回るまでの短い期間。「旬の味を、ぜひ味わってください」
使うそば粉は県産のでわ[雄永1.1]かおりをメインに、季節によって品種が変わることもあるが、製粉方法などを微調整しながら味や香りに大きな変化が出ないことを目指している。石臼による粗挽きで風味もよく、しっかりとした甘みもあり、ちゃんとすすって食べられるし、田舎そばならではの食感も楽しめる。
受けるつゆは濃いめの味。2~3カ月寝かせるというかえしに、鰹節や宗田節、鯖節で取ったダシに、水出しした煮干しと昆布のダシを合わせて加え、さらに一晩寝かせてから使うといい、一体感のある味わいが、そばの旨みを上手に引き立ててくれる。
今年は夏限定メニューとして「夏野菜そば」を提供する。「田舎そばは野菜の揚げびたしともよく合います。しっかり食べて夏を乗り切ってほしいですね」
よく見ると、「板そば」の上にも「夏野菜そば」の上にも極太のそばが数本のっている。店では「どすこい」と呼んでおり、甑岳のたくましさを表現しているそう。さすがにすするのは難しいが、甑岳のパワーは伝わってくる。「これだけ食べたいと注文するお客様もいます」。クセになりそうな予感がする。







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- 取材・文:川野達子
- 写真:齋藤太一







