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山ぶどうをアイデンティティに醸す、地元の人に愛されるワイン

葛巻町 岩手くずまきワイン

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記事制作:
Kappo
葛巻町 岩手くずまきワイン

「葛巻町は山ぶどうを使い、さまざまなことに取り組んできました。ヨーロッパは長い歴史の中でワイン専用のブドウ品種を守り続けてきましたが、日本で固有の品種といえば、それは山ぶどうでしょう」

鍋倉地区の圃場。山ぶどうは雌雄異株の植物なので、受粉して実をならせるために混植する。
葛巻町長で、岩手くずまきワインの代表取締役社長でもある鈴木重男さん。いわてワイン振興協議会の会長も兼ねる。「今でもブレンドのテイスティングには参加しています。女性に選ばれるワインかどうかが大切な基準です」

岩手くずまきワインの立ち上げから関わり、現在は町長と社長を兼ねる鈴木重男さん。標高800m、冷涼な風の渡る平庭高原など葛巻町には山ぶどうが自生していた。それを知った当時の町長は新たな産業を興すべく「葛巻町をミルクとワインの町に」と号令をかけ、1979年にプロジェクトがスタート。以来45年、今に至るその道は決して平坦ではなかった。「当時はワインを造る人も飲む人もいなかった」という時代、鈴木さんらは試行錯誤を重ねる。「歴史あるワイナリーに勉強させていただきました。特に私は山形のタケダワイナリーさんから地元のブドウを使うことの大切さを学びました」と振り返る。「はじめは高級路線を取っていましたが、なかなかうまくいかず、地元のブドウを使い、手頃な価格のワインを造ることにシフトしました。周辺地域と連携して、気象条件に合ったブドウを育て、気軽に飲んでもらえるワインとして町民の皆さんにも愛用される特産品になっているのではないでしょうか」という。山ぶどうは一粒が約10mm と小さく、種が大きい。一粒からわずかな果汁しか採れないが、熊が冬眠前に好んで食べると言われるほど滋養のある果実だ。日本のワイン専用種には自生種の「山ぶどう」、交配種である「小公子」「ブラックペガール」「ヤマソーヴィニヨン」などいくつか種類があり、くずまきワインではすべての赤ワインに山ぶどう系をブレンドしている。

製造部長の大久保さんは「山ぶどうは収量が少なく、栽培が難しい品種です。栽培には多くの手間がかかります。特に芽が出るのが早いため、霜にやられやすいのが特徴です」と語る。「小公子」は皮が柔らかく、糖度が上がりやすいが、雨が降ると割れやすいため、収穫のタイミングを見極めるのが難しい品種だ。「澤登ブラックペガールは最初はブレンド用として考えていましたが、熟成させると面白い味が出てくることが分かり、単品で出すようになりました。色は赤ワインとしては薄めですが、ドイツのピノノワールのような深い味わいが特徴です」

(左から) 澤登ブラックペガール 720ml / 1870円 山ぶどう研究家で"山ぶどうの父"と称される育種家の故・澤登晴雄氏が生み出した山ぶどう交配種・ブラックペガールを主原料にしたワイン。野性味と爽やかな酸味がポイント。 蒼 720ml / 2838円 山ぶどう交配種・小公子を100%使用。凝縮されたドライフルーツのような香りと野性味のある味わいが特徴。「小公子は交配によって生まれた品種ですが、具体的に何を交配したのか分かっていません。いろいろな山ぶどうをかけ合わせ選抜した結果、よい特性を引き継いだブドウになったようです」と大久保さん。 レアリティ 720ml / 3960円 岩手県産の山ぶどうを使い、樽で熟成させた限定醸造の赤ワイン。酸味と深いコクが楽しめる。2022年ジャパン・ワイン・チャレンジ「ブロンズ」受賞。 星(エクセル内の写真) 720ml/1,870円 セイベル9110の果汁を凍結させ、糖度の上がった濃い果汁を発酵後、シュールリーをして仕上げた。香り高く、余韻の長い果実味のある爽やかな酸味が特徴。「フェミナリーズ世界ワインコンクール2025」白ワイン部門金賞。

地元の人のためのワインを造ってきたくずまきワインだが、「ほたるスパークリング」が世界の女性ワイン専門家が審査する「フェミナリーズ世界ワインコンクール2024」で金賞を受賞するなど、近年コンペティションでの入賞が目立つようになった。鈴木さんは「よい年のワインを保存し、それらをブレンドすることで、どんな年でも一定の品質を保つようにしています。20年ほどの時間がかかりましたが、ブドウの樹も同様に年を重ねることで質が安定してきました。経験を積むことで、品質の高いワインが造れるようになりました」と語る。ただ、まだまだ課題も多い。「岩手県独自の品種改良が求められていますし、やはりブドウが足りません。原料の確保が最優先です。新規就農者を増やしたいですし、さらなる地域連携が必要です」

製造部長・大久保圭祐さん。カーブにはアメリカンオーク熟成の「澤登ブラックぺガール」「蒼」「レアリティ」などが眠る。「山ぶどうは特別な品種であり、その特徴を生かしたワイン造りを続けていきたいです。地元のブドウを大切に、品質の高いワインを造るのが目標です」
自社畑では山ぶどう系のみを栽培。栽培担当の松澤健吾さんが剪定作業中。
ほぼすべての種類のワインがテイスティング可能。贈答用にも。

岩手くずまきワイン

住所
岩手県岩手郡葛巻町江刈1-95-55
電話
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  • 取材・文:川元 茂(編集部)
  • 写真:池上勇人